心の原風景

suzume-smile2006-08-12

切なくなるような花火のシーンが出てくる映画があった、と思って記憶を辿って手にしたのは「阿弥陀堂だより)」。Suzumeの大好きな北林谷榮樋口可南子が出演している作品で、信州の山里に移り住んだ夫婦と村のお堂に住むお婆さん「おうめ」や他の村の人々とのふれあいを描いたもの。
北林谷榮がおうめ婆さんを演じる、と聞いただけで、パブロフの犬のように「あぁ、自分が経験していなくてもノスタルジックな気持ちになれる、古き良き日本の文化・慣習が漂う映画なんだろうなぁ」って思えるでしょ?しかも、さらに香川京子も出演しているって聞いたらなおさら期待で胸が膨らむはず。その期待を全く裏切りません。
ストーリーは至ってシンプル。解釈がわかれるような場面もない。
山里の四季や時間の流れに逆らわず、静かに生きる人々。
クレジットでは目立たない順序で名前が登場するのだけれど、実は小西真奈美が映画の中で重要な役割をになっている。彼女が村の広報誌に書いている「阿弥陀堂だより」は、おうめ婆さんが日々思っていることを彼女がお堂に通って会話を重ねながら書きとめ、それをコラムにしているのだけれど、その文章がとてもいいのだ。自然に逆らわず、何事にも感謝の念を抱いて生きてきた96歳のおうめ婆さんが発する言葉だからこそ意味が深い。それを上手に簡潔に表現している。そして、彼女の病状が悪化してしまうことで、主人公の樋口可南子が医者として再度奮起するきっかけが生まれるのだ。
とにかく里の四季が叙情的な映像になっているのを見るだけでも、心がしっとりしてくる。今日、記憶を辿って映画を観てみたら、実は花火は尺玉が2発ほど登場するだけで登場人物の会話もなく、四季を綴る1シーンとして登場しただけだった。それでもSuzumeの心には印象強く残っていたんだね。