勇気をくれる人

実業団女子駅伝。今年は、トップ争いで素晴らしいレースを見せてもらいました。色々とポイントはあるけれど、やはり最終第6区の弘山晴美選手と大崎千聖選手の走りに尽きるでしょう。
ちなみに、テレビの中継では、やたらと「年齢差が2倍」と実況アナウンサーが繰り返して、非常に失礼だった!大崎選手は今春に高校を卒業したばかりで、実業団駅伝初挑戦の文字通りルーキー。一方の弘山選手は、社会人選手としては16年目に入ったベテラン。そういう対比だけで十分なのに。2倍ってことには何の意味もないよ。
大崎選手がかろうじてトップでたすきを受け取って、そして僅か10秒差で弘山選手が走り始めたとき、Suzumeはきっと資生堂が初優勝するだろうと思った。理由の1つは経験の差。弘山選手はレース運びをよく知っている。体調さえ悪くなければ、彼女は勝負を仕掛けるポイントも戦術も冷静に考えながら走ることができる。一方の大崎選手は、高校時代から走っていたとは言え、まだまだこれからの人だ。
そしてもう1つは気持ちの違い。資生堂はレース前からずっと「弘山先輩に優勝テープを切らせて上げたい」という思いでチームが一丸となっていたから、弘山選手はどんなに苦しくても後輩達の思いに応えるために、そして自分自身の陸上競技生活の仕上げのためにトップにこだわるだろう。大崎選手も三井住友海上の4連覇(しかも4連覇は実業団女子駅伝で史上初!)という重い使命を背負っていたけれど、彼女は初挑戦だし「自分はまだこれから」という気持ちが心の片隅にあったと思う。
でも、いずれの点でも大崎選手の頑張りは本当に素晴らしかった!!最後の競技場に戻る直前に弘山選手との勝負に力尽きたけれど、それまでの約6キロをすごい集中力とバネで走って、白熱するレースを展開した。来年以降の駅伝での活躍が楽しみな選手だ。いずれはトラックかマラソンで力を発揮するかもしれない。
そして弘山選手。彼女は、マラソンを制するには若さや勢いだけじゃない、たゆまない努力の積み重ねと自己管理、レース運びの熟練さが大切であることを身を持って示してくれた、私達30代の希望の星だ。今日のレースももちろんだけれど、今年3月の名古屋国際女子マラソンの初優勝もそうだった。(そういえば、このときも途中でトップ争いに負けて2位になったのは三井住友海上渋井陽子選手だった)今日の彼女の走りで、私はまた大きな力と勇気をもらった。この頃は、色んなことを年齢のせいにしたり、歳を言い訳に使うことが多いけれど、本当はそれじゃダメなんだ。もちろん弘山選手の場合は、ずっと地道に努力してきたこと(って言っても、これまでだって相当な実績を残しているんだけど)が大きく結実しているのが今年だ、というだけで、今になって新しいことに挑戦しているわけではない。でも、挑戦することを恐れない、という勇気をもらった。
彼女、実は先月も上海でマラソン大会に出場して2位だったんだよね。そんなタフなレースを走った後に、1ヶ月もしないうちに駅伝で走るなんて、本当に強靭な体力。いや、心もとても強い人なんだと思う。細い身体に、しなやかで強い心をもった弘山晴美さんという存在にとても憧れます。