アカウンタビリティ

フジのTOB

ここのところ、ずっとメディアを賑わせている、ニッポン放送&フジvsライブドア。株って何だかよくわからないなーって思っていた人も、TOBが何の略語か答えられなくても意味は言えるようになった。時間外取引って言葉も知ったし、多数決原則の世の中にあって株式保有については過半数じゃなくても1/3でも大きな意味があるんだということもわかった。この抗争がどういう結末を迎えるのか、私には予測の範囲内ではないのだけれど、少なくとも堀江氏のチャレンジは、上記のような効果を日本国民にもたらした、と思う。(あ、一応、Suzumeは上に書いたようなことはホリエモンが出てくる前から知っていた。仕事にも関係あるし、大学院の授業でもこういう話は出てくるから。)
ところで今回のTOBフジサンケイグループから、親密な取引先企業に、今後の良好な関係維持をちらつかせながら応募をお願いした、というのが現実。ま、どこの国でもよくある話だから、その行為をどうのこうの言うつもりはないけれど。
でも、フジとライブドアで激しくシェア争いを展開した結果、株価が上昇してTOB終了日時点で6600円。一方、TOB価格は5950円。自分が持っている株を手放す場合、株価だけを基準に考えたら、市場(ライブドアが買い集めている方)に放出するのが当然の選択だ。それなのに、5950円の価格に応じた企業(大和SMBCとか電通、TEPCO等々)。彼らは、社内でどのような交通整理をしたのだろう。それぞれ上場して社外に株主が存在する以上、(当然の選択をしなかったことに対して)それが株主の利益を損なう選択ではないことを説明する義務があるはずだ。この説明する義務とか責任のことを、アカウンタビリティと経済用語では言っている。
ものすごく単純に言ってしまうと、多分、TOBに応じなかったら失うであろうフジサンケイグループとの取引(営業利益)と、(6600−5950)×保有株式数を比較して、「ほらね、市場に放出することで失うものの方が大きいでしょ」って感じだろうか。
でも、TOBで株式を譲ってしまったら、彼らはもう株主ではなくなってしまう。言ってみれば、「持ちつ持たれつ」の関係からは変化してしまうのだ。フジサンケイグループは、これから先、経営トップが交代した後も「そういえば2005年のTOBのときに、この会社は協力してくれたんだよねぇ」とずっと恩義に感じて、取引を継続してくれるんだろうか。

その陰で

ニッポン放送&フジvsライブドアのトピックスが無ければ、1面になったかも知れない記事。住友信託銀行UFJ銀行に1000億円の損害賠償を追加請求。「UFJと統合していれば得られたであろう利益」が加わっているらしい。
よくわからないから卑近な例えに置き換えてしまうけれど、婚約したことを周囲に披露した直後に「実は今更だけど、他に好きな人ができたから、この話は白紙にしてくれ」と言われた場合に、「あなたと結婚していれば、将来、こんなに豊かな生活ができたはず」という金額も慰謝料に上乗せ請求するかなぁ。。。 
いずれにしても、ここでもまた、アカウンタビリティがカギになっているかも知れない。住友信託銀行UFJとの統合が破談したことや、これからどういう経営戦略を打ち出すのか、ということを株主に納得してもらう必要があるから、転んでもタダで起きるわけにはいかない。ということなのかな。