あれから10年

10年前の今日

ちょうど神戸にいた。阪神大震災の後、色々な混乱があったけれど、ようやく一部の路線区を除いて電車が動き始めた頃だ。春分の日に有給休暇をくっつけて、神戸を見に行った。当時、Suzumeは地震とか台風のような広域災害に関わる仕事をしていたから、大震災の報道はテレビで見ていたけれど、実際に倒壊したアパートや住宅、火災で焼失した商店街、崩れかかった橋梁、そういうものを自分の目で捉えておきたかった。でも地震が発生してしばらくは、自分の仕事も当然のことながらバタバタ状態が続いたし、その後も関係者でもないのに、むやみに出かけるのは良くないと思って自粛していた。で、ようやく得た機会。地図とカメラを手にして、2日間、各地区を歩きつづけた。
確か2日目の午後。一通りの目的を果たして、拠点にしていた京都に戻ってタクシーに乗ったら、ラジオ放送で「東京で電車内に毒ガスが撒かれた」というような報道をしていた。運転手さんが「なんか東京はえらいことになっているみたいですよ」と。後でわかったことだけれど、サリンが撒かれた電車は、毎朝、自分が利用している時間帯のものだった。会社を休んでいなければ、多分、その電車に乗っていた。
Suzumeの身内は当時、聖路加国際病院に勤務していた。その日の朝は当直明けで、申し送りをして帰宅しようとしたところに次々と患者が運び込まれてきて、病院内は大変な状況だったみたいだ。でも、聖路加病院が何年か前に全面改築をした際に、日野原重明先生が大災害時を想定して、病室以外でも治療ができるように廊下の壁にも酸素吸入の取付け口を配備してあったから(←ちょっと記憶に自信がないけれど酸素吸入だったと思う)、大勢の患者を受け入れることができた、という聞いた。設計当時、その工夫を「やりすぎだ」と非難する声もあったそうだけれど、こうして地下鉄サリン事件では見事に奏効したわけだ。この辺の話は、最近「プロジェクトX」でも取り上げられたらしい。この先生、本を書けばベストセラーだし、何だかとってもスゴイ人だ・・・。

備えあれば…

地下鉄サリン事件は人災だけれども、地震や台風、どれも予期せぬ災害である点は共通している。「まさか自分の身に降りかかるとは」というレベルのリアリティがないことについて、対策を講じるのは難しい。東京に直下型地震が発生したら被害はどの程度、なんてシナリオが公表されているのに、心のどこかで「でもまさかねぇ」などと甘いことを考えている自分がいる。
サリン事件は二度と起きて欲しくはないけれど、この10年で凶悪な犯罪が増えているのも事実だ。そういう天災や人災から身を守るために日頃からどんなことに気をつけていればいいのか、不幸にも遭遇してしまったら自分はまず何をすべきか。毎年、3月20日にはそんなことを考えている。