青春の1冊

悲しみよこんにちは

朝吹登水子さんが逝去した。作家で翻訳家、と記事には書いてあったが、彼女の名前を見て「フランソワーズ・サガン」を連想しない人はいないだろう。
Suzumeはフランス文学かぶれでは無かった(と思う)けれど、サガンサルトルにとても夢中になった時期があった。10代の終わり頃だっただろうか。
でも原書で読んだわけではないから、正確に言えば、サガンの文章というよりも朝吹氏が紡ぐ言葉の世界に浸っていたのだと思う。
最初に読んだのは「悲しみよこんにちは (新潮文庫)」。その後も「ブラームスはお好き (新潮文庫)」「ある微笑 (新潮文庫)」「愛は束縛 (新潮文庫)」「心の青あざ (新潮文庫 サ 2-11)」など文庫になっている作品はすべて読んだ。その甘美で刹那的な世界に、「10年後の夢よりも、今日の晩御飯をどうするかが大事」と冷めた現実主義者を気取っていた当時のSuzumeは、実は密かに憧れていたのかも知れない。あぁ、ひねくれ者(笑)
しかし30代の今、あの切なくて破滅的な愛にあふれた世界にもう一度浸ることはできない。哀しいかな、Suzumeは平々凡々な大人になってしまったのだと思う。
サガンが亡くなったのは2004年9月。それから約1年。追うように亡くなった朝吹氏のご冥福を祈りたい。