匂ひ立つ

香りは夜の方が強い?

大学院の講義が終わって帰り道。近所の公園の脇を通ったら、金木犀の甘い香りが夜の空気とともにSuzumeを包んだ。子供の頃、自分の部屋の窓の下に隣家の金木犀があって、秋の夜、窓を開け放つと部屋の隅々まで甘い香りが否応なしに入ってきた。Suzumeは息苦しささえ覚えるその甘い香りがいつしか嫌いになった。
花は虫に花粉を運んでもらうために鮮やかな色をしていたり、香りを放つのでしょう?
そうだとしたら、虫が活動する昼間の方が香りが強いはず。
でも、子供の頃からSuzumeは夜の方が香りが強いって思っていた。朝、登校時には全く感じないのに、夜の帰り道では遠くからでも花の香りに気づく。そのことを見出したのは、オシロイバナだった。学校に通う途中にオシロイバナが沢山あったけれど、クラブ活動や塾からの帰りに暗い道を歩いているとどこからともなく匂ってきた。Suzumeはこの花の香りが好きだったから、夜はわざわざ回り道をしてでもオシロイバナの咲く場所を選んで帰った。
夜は目に映る情報が減るから、その分だけ嗅覚が鋭敏になるのだろうか。それとも、昼の間に花が放った香りが近くに漂い続けているだけなのだろうか。そのことが長いこと不思議でならなかった。
オトナになってから、オシロイバナは季節によっては夕方〜夜にかけて咲き、匂いを放つ花なのだと知った。
英語ではFour O'clock(夕方4時から咲くので)またはbeauty of the nightと呼び、和名でも別名を夕化粧と言うそうだ。まぁ、言われてみれば確かに「オトナの香り」って感じかも知れない。