だいじょうぶだよ

物心がつく頃には、すでに苦しいことをギリギリまで独りで抱え込んでしまう子だった。「いい子だね」と言われるたびに、その期待を裏切ってはいけないと子供ながらに気負っていたと思う。でも、今になって思い返すと、親はちゃんとわかっていたのかも。あえて独りで考えさせてSuzumeの自立心を養おうとしていたのかも知れない。最後の最後になって「Suzumeは独りで一生懸命、頑張っていたんだよねー。でも、もう我慢しなくていいよ。だいじょうぶだよ。」という言葉をかけてもらうと、Suzumeは心の緊張の糸がほどけて「うぅぅっ。うぇ〜んっ」と泣き出してしまう。そんな展開が、一番遠い記憶で3歳の頃から、そして10年ほど前まで何度か繰り返された気がする。
「だいじょうぶ」というのは、魔法の言葉だと思う。
子供には将来の可能性が無限に広がっていて、体験することすべてが素晴らしく、あらゆる経験が成長の糧になるもの…なんていうことは、大人になってから当時を振り返って感じること。自分が子供だった時は、新鮮で楽しい新体験と同じくらいに不安な挑戦が山のようにあったような気がする。そんな挑戦に足がすくんでしまう時、自分をよく知っている人から「だいじょうぶ」と言ってもらえるのは、お守り以上に大きな支えになっていたはずだ。
それは大人でも同じこと。いい大人だって、自分が予想だにしていないことに直面すると不安になったり、気が動転する。「あなたなら大丈夫、きっとやり遂げられるよ」「失敗したって大丈夫だから、思いっきりやってみたらいい」。シチュエーションによってメッセージは違うと思うけれど、そばにいて「だいじょうぶ」と言ってくれる人の存在が、その言葉が大きな力になる。(時には言葉ではなくて、手をギュッと握り締めてもらえるだけでも、ね)
小さい子供をもつ知り合いから勧められた絵本「だいじょうぶ だいじょうぶ (講談社の創作絵本)」(いとうひろし)。主人公のぼくとおじいちゃんのお話。ぼくとおじいちゃんは毎日、一緒に散歩をする。おじいちゃんが手をにぎり、おまじないのように『だいじょうぶだいじょうぶ』と言ってくれることで、ぼくは怖いことも困ったことも乗り越えて大きくなっていく。そして…。
これは大人にこそ読んでもらいたい絵本。ほのぼのしたイラストとお話によって、日常の忙しなさで薄れてしまいがちな優しい気持ちを取り戻すことができる。
だいじょうぶ だいじょうぶ (講談社の創作絵本)