斬新なオペラ

suzume-smile2006-11-04

本日開幕のシャトレ座出張公演、ジャン・フィリップ・ラモーのオペラ「レ・パラダン--遍歴騎士」@オーチャードホールを観賞。ラモーはバッハと同世代でルイ15世の宮廷作曲家。「レ・パラダン」はその晩年(1760)の作品で「オペラ・バレ」というジャンルに分類されるらしい。Suzumeは、クラヴサンチェンバロ)音楽が好きで、ラモーもクラヴサン曲集のCDはよく聴くけれど、オペラは初体験。そもそも、ラモーのオペラ自体、日本ではあまり上演されないのではないだろうか。
今回は運よく招待枠で席をいただけた(しかもS席!)ので、学生時代からの友人と観劇。彼女は某局で芸術番組も担当する舞台観劇好き。歌舞伎や演劇の好きなSuzumeが「もう1人」を探すときに声をかけやすいのだ。
そして「レ・パラダン」は凄かった!!
舞台装置の代わりに背景のスクリーンにはアニメーションを含む映像が映し出される。それからダンス。主要人物の横には分身としてのダンサーが配され、心情を踊りで表現する。そしてダンサーだけでなく、ときには歌手達も一緒に踊るのだ。歌いながら踊るって…しかもミュージカルと違ってマイクは無い…恐るべし、彼らの身体能力。ダンスは、クラシック・バレエとコンテンポりーダンスやブレークダンス、ヒップホップが何の違和感もなく舞台の上で共存している。服装も、物語の舞台となる18世紀風の服装と現代的なダンサーの格好が入り乱れ、最後には(一糸も纏わない)ヌードの男女が4人も登場してびっくり!
クリスティの指揮は、軽快なテンポでリズミカルで、バロック音楽に新鮮な息吹を送り込んでいた。バロック音楽は、その当時は(私達がイメージするような重厚な音楽というよりも)軽快で早いテンポで演奏された、という話も聞いたことがあり、その解釈を再現させた結果が今日の演奏だったのかも知れない。
本当は音楽とアリアに注力するはずのオペラ観劇、それが奇抜なダンスやら、舞台スクリーンに映し出される雲の上で跳ねる人々やウサギの大群やらに自分の感覚が翻弄され、何ともいえない不思議な気分になった。かといって、不快感はなく、むしろ、映像・ダンス・歌唱・伴奏それぞれの水準の高さに浸って五感全部で楽しんだような感じだ。
18世紀の音楽と現代のIT・文化が融合するとこうなるんだ、というアウトプットを目の当たりにして、「これを生み出し、これを受容するフランス人・フランス文化ってすごいなぁ」と心から感嘆した。
ちなみに、ヌーディスト4人は青空と宮殿の庭の映像をバックに登場。庭の彫像(裸婦)を象徴しているのか、あるいは人間讃歌を表現したものか。フロアの20列目前後に座っていたSuzumeの目には猥雑さは感じられなかったが、上半身も下半身も隠すことなく露にして踊る光景は、前方の人達の目にはどう映っただろう。Suzumeの席の周辺の人々が、ヌーディスト達が登場するやいなや、一斉にオペラグラスを手に取ったのには苦笑を禁じえなかった(笑)
観劇の後は、東急本店内「なだ万」にて食事をして、お互いの近況を語り合って帰宅。大満足の夜でした。