骨太なドラマ

今、NHK「ハゲタカ」が面白い。企業再生、バイアウト、TOB…この数年で広く知られるようになった言葉をテーマにした経済ドラマ。お飾りのようなつまらない恋愛模様が介在しない骨太なドラマで、久々に「固唾を飲んで観る」充実した土曜夜を過ごしている。NHKドラマは時々こういうスマッシュヒットを打つから見逃せない。「クライマーズ・ハイ」もそうだった。
副題は「ROAD TO REBIRTH」。企業の再生、日本経済の再生を指すようであり、でも実は主人公・鷲津の人としての再生を目指す道でもあるのだと思う。そういえば、鷲津を演じる大森南朋は「クライマーズ・ハイ」でも熱血新聞記者を好演していた。今回はかなり冷血な人物像を演じていて、「クライマーズ・ハイ」と同じ役者とはとても思えない変身ぶりだ。もっと言うならば、このドラマの中で、銀行員時代に貸し剥がしで工場主を自殺に追いやってしまった時の項垂れた姿と、ファンドの日本代表としてターゲット企業に厳しい要求を突きつける姿。ほぼ同じ時期に撮影しているのに、月日の経過も感じさせる演じ分けが素晴らしい。
さらに、脇役と言ってはナンだが、主人公を取り巻く大物俳優達がドラマをピリッと引き締めている。前半で登場した中尾彬や本日登場した菅原文太の存在感はスゴイ。それから(この人は一体、何本のドラマを掛け持ちしているの?と思いたくなる)大杉漣、宇崎竜童、カメラレンズの職人・田中泯。若手では、松田龍平が好演(中村獅童が降板したのは結果としてドラマにはプラスだったと思う)。
地味だけれどSuzumeのツボにはまるのは、鷲津が率いる外資系ファンドのメンバー・中延役の志賀廣太郎。この人、見た目は単なるオッサンなのですが(失礼!)、すばらしいバリトン美声なんですよね。彼に初めて注目したのは、深っちゃん主演ドラマ「恋ノチカラ」で楠木文具の社長役として登場した時。キャラ設定も良かったのですが、どちらかと言えば口の重い台詞回しに渋い声が重なると、一言一言に人生の重みが感じられて心に残ったのでした。最近では篠原涼子主演の「アンフェア」に出ていたり、今期は「わるいやつら」の最後2話で裁判官役を演じていたり、ちょこちょことテレビに出ています。